「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」は、申請や受給方法に違いがあるものの、
再就職後に、前職場との給与の落差があった際、
その差の一部を補填する支援策として、同様な役割を持っています。
60歳を超えた定年退職者などが、
再就職した場合を対象としたものが、「高年齢再就職給付金」です。
一方、「再就職手当」は、働く全ての世代を対象とし、
まずは、再就職時に、祝い金として「再就職手当」が支給されます。
あまり知られていないようですが「再就職手当」は、
もうひとつの「就業促進定着手当」とが、ひとセットになっています。
・「再就職手当」
・「就業促進定着手当」
「再就職手当」と、「就業促進定着手当」とは連動しており、
再就職をした企業に、6か月間働いたのち、前職場との給与格差があった場合、
その一部を補填する「就業促進定着手当」を申請できます。
なぜなら、
「再就職手当」の支払決定通知書の郵送時に、「就業促進定着手当」の申請書が同梱されているからです。
多くの方は、「就業促進定着手当」をその時まで、知ることが無いようです。
60歳定年退職者が、再就職する際、
どちらか一方の制度を利用することが可能であり、その選択に迷うことになります。
このブログは、37年間大手機械メーカーに勤め、60歳定年退職を迎えた筆者“ししとう”が、当事者の目線でお伝えします。
支援制度の全体像から高年齢再就職給付金と再就職手当を説明します。
求職活動に関わる、支援制度の全体像を、把握しましょう。
再就職活動で使える支援制度がいくつもあり、それぞれを関連付けて考えていきます。
・失業手当
・再就職手当
・就業促進定着手当
・高年齢再就職給付金
60歳定年退職者が再就職をするために歩む道筋を考えます。
行動スケジュール上に、それぞれの支援内容を置くことができます。
個々の支援制度には、ルールや期限があり、
支援策を上手に使うには、計画的に動くことが大切な事だと見えてきます。
給付を受けることが、目標に向かって行動する事につながります。
高年齢再就職給付金と再就職手当の受給総額を比較します
60歳定年退職者の求職活動に沿って、
高年齢再就職給付金と再就職手当を利用した場合の支給総額を比較します。
“ししとう”の数字を使って試算してみます。
▼条件 ~“ししとう”~
・勤続年数 37年
・失業手当の給付期間 150日
・待期期間 7日
・給付制限期間 無し (定年退職時)
・前職の月額賃金(実績) 406,860円
・基本日額 6103円 (失業手当の基準額)
・再就職手当における基本日額 5004円 上限値(60歳以上65歳未満)
・再就職先1年間の月額賃金(参考値) 220,000円
(会社から提示された継続雇用の場合の給与)
A.高年齢再就職給付金の支給条件
高年齢再就職給付金
・60歳以上65歳未満で会社に再就職し社会保険に加入している。
・再就職先の賃金が、退職前の60歳時点と比較して、75%未満となっている
・失業手当の支給残日数が、100日以上である事。(入社の前日まで)
給付金の額は、再就職先の賃金の原則15%です。
但し賃金の対価率によって15%を上限に、支給率が変動します。
支給残日数が100日以上で、支給期間は1年間です。
会社が、ハローワークに申請手続きをして、社員が給付を受けます。
A.高年齢再就職給付金を利用する場合
▮まず、失業手当の給付を受けながら50日以内に再就職先を決める
支給残日数を100日以上残すためには、
給付期間を50日以内に、再就職先を決める必要があります
①失業手当 | 基本日額 | 支給日数 | 支給残日数 | 支給額 |
---|---|---|---|---|
100日数を残して再就職 | 6,103円 | 50日 | 100日 | 305,150円 |
ハローワークで求職申込の認定を受けて、50日以内に、再就職します。
失業手当の支給が、50日間で、受給額 305,150円です。
※参考 失業手当の計算サイト
以下のご自身の数字を用意ください
離職前6ヶ月間の賃金総額・・賞与、退職金、祝金は除く
離職時の年齢・・60歳以上65歳未満
被保険者期間 ・・20年以上
▮再就職先がきまったら、高年齢再就職給付金を申請する
●高年齢再就職給付金 | 前職賃金 | 再就職時の賃金 | 低下率 | 支給率(61%以下) |
---|---|---|---|---|
前職と再就職の給与条件 | 406,860円 | 220,000円 | 54.1% | 15% |
支給残日数 | 支給回数 | <注> | 推定支給額 | 推定支給計 |
100日の支給残日数 | 12回 | 毎月の実績賃金で支給→ | 33,000円 | 396,000円 |
再就職後、毎月の給与と前職の給与と比較し、
会社が申請手続きし、本人の口座に振り込み受給されます。
高年齢再就職給付金 毎月の推定支給額 33,000円、
1年間12ヶ月の合計支給額は、396,000円です。
隔月支給(2か月分) × 6回 振込支給されます。
実際は、賃金の実績値で算出支給されます。
※参考 高年齢再就職給付金の計算サイト
以下のご自身の数値をご用意ください。
60歳到達時の賃金・・406,860円
60歳以降の賃金 ・・220,000円
▮①失業手当 + 高年齢再就職給付金での推定総支給額
①失業手当と●高年齢再就職給付金を 受けた場合の推定値 | 支給残日数 | 高年齢再就職給付金の 支給期間 | 推定支給総額 |
---|---|---|---|
100日数を残して再就職し定着勤務 | 100日 | 1年間 | 701,150円 |
▶①失業手当と高年齢再就職給付金を合計した推定支給額は、701,150円
B.再就職手当の条件
①失業手当 → ➁再就職手当 → ③就業促進定着手当
と連続して申請できる手当の一部です。
この事を頭にとどめて、説明を進めていきます。
・失業手当の給付期間を、3分の1以上残した状態で、就職が決定すると、再就職手当を受給できます。
・60歳定年退職者の場合は、給付期間150日で、3分の1以上残した状態とは、50日残になります。
給付残日数の違いで、計算の比率が変わり、多く日数を残すと比率が大きくなります。
ここでは、高年齢再就職給付金の条件に合わせ、
給付日数を100日以上残した場合の計算式を示します。
再就職手当 = 給付残の日数 × 再就職手当の基本日額 × 70%
B.再就職手当を利用した場合
▮失業手当の給付を受けながら50日以内に再就職先を決める
①失業手当 | 基本日額 | 支給日数 | 支給残日数 | 支給額 |
---|---|---|---|---|
100日数を残して再就職 | 6103円 | 50日 | 100日 | 305,150円 |
ハローワークで求職申込の認定を受けて、50日以内に、再就職します。
失業手当の支給が、50日間で、受給額 305,150円です。
※参考 失業手当の計算サイト
以下のご自身の数字を用意ください
離職前6ヶ月間の賃金総額・・賞与、退職金、祝金は除く
離職時の年齢・・60歳以上65歳未満
被保険者期間 ・・20年以上
▮再就職先がきまったら、再就職手当を申請する
②再就職手当 | 再就職手当の 日額の上限 | 支給残日数が 全体の何/3 | 再就職手当の 係数 | 支給残日数 | 支給額 |
---|---|---|---|---|---|
100日数を残して再就職 | 5004円 | 2/3超→ | 70% | 100日 | 350,280円 |
再就職手当 = 再就職手当の基本日額 × 給付残日数 × 70%
= 5004円 × 100日 × 70%
再就職手当の受給額は、350,280円です。
※参考 再就職手当の計算サイト
以下の数字を用意ください
離職時の年齢・・60歳以上65歳未満
基本手当日額・・5004円(60歳以上65歳未満の上限額)
所定給付日数・・150日
支給残日数 ・・100日
▮就職してから6か月後、就業促進定着手当を申請する
就業促進定着手当は再就職手当と連動している手当です。
再就職手当の支給通知とともに、就業促進定着手当の対象者であることが同封書面で伝えられます。
③就業促進定着手当 (上限金額による計算) | 再就職手当の日額 の上限に従う | 支給残日数が 全体の何/3 | 雇用促進定着手当 の係数 | 支給残日数 | 支給額 |
---|---|---|---|---|---|
100日数を残して 再就職し定着勤務 | 5004円 | 2/3超→ | 30% | 100日 | 150,120円 |
就業促進定着手当は、再就職手当と連携したパッケージ手当ともいえます。
この就業促進定着手当は、一般にあまり知られておらず、再就職手当決定通知の郵送のタイミングで知る人が多いようです。
就業促進定着手当の支給条件
・既に再就職手当の支給を受けている。
・再就職の日から同じ企業に6ヶ月以上、雇用されている。
・再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回る。
申請は、再就職から6か月経過した日の翌日から2か月間に、本人が、ハローワークに申請する。
この手当は、現役世代の転職活動を定着するのを主目的にしています。
したがって、60歳定年退職者の場合は、通常の算出方法とは異なります。
なぜなら、60歳以降の再就職時の給与は、6割前後に減少するのが一般的です。
よって、手当の設定上限を遥かに超えてしまうためです。
さらに、年齢による基本日額の上限もあり、別の計算式で算出することになります。
就業促進定着手当 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 30%
= 5,004円 × 100 日 × 30%
就業促進定着手当の受給額は、150,120円です。
※参考 就業促進定着手当の計算サイト
以下の入力項目をご用意ください
・離職時年齢:60歳以上65歳未満
・離職前賃金日額:13,562円
再就職後6ヶ月間賃金
・(日額):7,333円
・(支払い基礎日数):180日
・基本手当日額:5,004円 (60歳以上65歳未満は5004円で上限固定です)
・失業保険支給残日数:100日、再就職手当支給率:70%
▮再就職手当に関係する3つの手当の総支給額
①、②、③の全ての給付を受けた合計 | 支給残日数 | 支給額①②③の合計 |
---|---|---|
100日数を残して再就職し定着勤務 ①、②、③の合計 | 100日 | 805,550円 |
▶①失業手当→➁再就職手当→③就業促進定着手当を合計支給額は、805,550円
試算の結果
就業促進定着手当を含め、求職活動支援の一つのパッケージと見た場合
再就職手当と連携した支援策を選択したほうが、総支給額が大きくなりました。
再就職手当と連携した支援策のほうが、金額のメリットが大きいとわかりました。
求職活動のスケジュールに沿って、3つの支援をつなげる視点を持ちましょう。
行動日程から見たそれぞれの支援策の使い勝手
実際に求職活動した場合、無理のない日程で行動をとれるかは、重要なポイントです。
高年齢再就職給付金は、
給付の前提条件、給付日数100日残にするために
再就職活動(ハローワークの登録)を始めて50日の期間、およそ1か月半の期間に、
企業を選定し、面接、内定、入社にこぎつけなけれはなりません。
しっかり計画をして行動しても、相手もあることなので、
この日程で採用にこぎつけられるか不透明です。
一方、再就職手当は、
もし、100日残で、再就職できなければ、次は、50日残の目標に切り替えられます。
再就職手当の支給額は、減りますが、就職先が決まるまで、失業手当の受給は続いています。
50日残ということは、およそ3か月ぐらいの期間(100日)に、
求職活動を始めて、前進と後退をしながら、行動を進め、
就職先を決めて入社をすることになります。
こちらのほうが無理のないスケジュールと思えます。
高年齢再就職給付金と再就職手当の比較
項目 | 高年齢再就職給付金 | 再就職手当 |
---|---|---|
前提条件 | 失業手当受給者 | 失業手当受給者 |
対象者 | 60歳~65歳(60歳定年退職者) | 65歳まで(全ての働く世代) |
申請者 | 会社 | 本人 |
給付残日数 | 100日以上 | 50日以上 |
申請期間 | 1年間 | 就職日の翌日から1ヶ月以内 |
支給方法 | 毎月(2か月毎振込) | 一括振込 |
連携する支援手当 | 失業手当 | 失業手当と就業促進定着手当 |
法制度 | 2025年以降に縮小廃止の方向 | 継続中 |
注意事項 | 併用はできない | 併用はできない |
狙い | 事業者へのメッセージ 60代人材雇用の認識を広げてほしい | 早期の再就職に対する お祝いと新しい生活への支援 |
高年齢再就職給付金は、
求職者本人だけでなく、採用する会社も申請手続きに関与します。
60歳定年退職者が、支援制度をあまり知らず、入社を希望してきた時、
企業側から給付申請の手助けを提案することもできます。
給付期限が近づいている場合、申請が間に合うように採用手続きを早めて、話を進めていけます。
このコラムは、60歳定年退職者の読者を想定していますが、企業側の人であれば幸いです。
もし、企業側から、高年齢再就職給付金申請の提案を受けたら、
シニア人材の活用に前向きな会社と見ることができます。
ぜひシニアの雇用を増やしていただきたいです。
再就職手当を選択できる人は、
自分で判断して、行動できる人と思います。
まさに、このコラムを読んでいただいているあなたです。
誰も、こんな制度がありますよ、と教えてくれません。
自分で調べて、行動した人が、受け取れる給付金と思います。
■「定年退職後は、可能であれば再就職したいけど、一旦お休みしたい」とお考えであれば・・
貴方に寄り添う『退職コンシェルジュ』に相談もひとつの選択肢です!まとめ
再就職活動で使える支援制度が複数あります。
それぞれは、前後で繋がりをもっていて、関連性を見て行く必要があります。
・失業手当
・再就職手当
・就業促進定着手当
・高年齢再就職給付金
60歳定年退職者が再就職をするために歩む道筋を考えます。
行動スケジュール上に、それぞれの支援を配置できます。
個々の支援制度には、ルールや期限があり、計画的に動くことで、支援策を使うことが必要です。
給付を受けとれるようにすることが、再就職を成功に導く、行動につながります。
▮高年齢再就職給付金の場合
支給条件
・失業手当の支給残日数が、100日以上である事。(入社の前日まで)
・再就職先の賃金が、退職前の60歳時点と比較して、75%未満となっている
・給付金の額は、再就職先の賃金の原則15%です、
・支給期間は1年間です。
会社が、ハローワークに申請手続きをして、社員が給付を受けます。
計算例として、“ししとう”の数字を使いました。
①失業手当 給付残日数100日 305,150円
A.高年齢再就職給付金
再就職の賃金 220,000円 支給率 15% 支給額 33,000円 支給期間 1年間(12回)
支給額 = 33,000円 × 12回
= 396,000円
前後関係のある給付手当を含めた合計 = ①失業手当 + A.高年齢再就職給付金
= ①305,150円 + A.396,000円
= 701,150円
▮再就職手当の場合
再就職手当は、①失業手当→➁再就職手当→③就業促進定着手当、と連続して申請できる手当の一部です。
(就業促進定着手当は、再就職手当の決定通知時に申請書が同封されます)
支給条件
・失業手当の給付期間を、3分の1以上残した状態で就職が決定する
・本人が、ハローワークに申請し給付を受けます。
高年齢再就職給付金の条件に合わせ、給付日数を100日以上残した場合の計算式になります。
①失業手当 給付残日数100日 305,150円
➁再就職手当 = 給付残の日数 × 再就職手当の基本日額 × 70%
= 100日 × 5004円 × 70%
= 350,280円
③就業促進定着手当 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 30%
= 5,004円 × 100 日 × 30%
= 150,120円
前後関係のある手当を含めた合計 = ①失業手当 + ②再就職手当 + ③就業促進定着手当
=①305,150円 + ➁350,280円 + ③150,120円
= 805,550円
▮結果
関係する支援手当を合計した数字の結果では、
再就職手当と連携した支援策のほうが、金額のメリットが大きいとわかりました。
求職支援の手当を、スケジュールに沿ったひとつのパッケージと見て
実際の求職活動につなげて見る視点を持ちましょう。
~“ししとう”~
・失業手当の給付期間 150日
・前職の月額賃金(実績) 406,860円
・基本日額 6103円 (失業手当の基準額)
・再就職手当における基本日額 5004円 上限値(60歳以上65歳未満)
・再就職先1年間の月額賃金(参考値) 220,000円
(会社から提示された継続雇用の場合の給与)
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